394 路上の事件

 

 ある日一人の男が路面電車から勢いよく飛びだし、まったく運の悪いことに、車に轢かれてしまった。
 交通はストップし、この不幸がいかにして起こったか解明すべく、巡査が現れた。
 運転手は車の前輪を指差しながら、長々となにか説明した。
 巡査はこの前輪のほうぼうを触りながら、手帳に何事か書きとめた。
 突然かなりの数の野次馬が集まりだした。
 どこかの市民は、にごったような目をして、路傍の石台から転げ落ちてばかりいた。
 どこかの奥さんは、他の奥さんをじっと見つめていたが、そちらはまたそちらで、最初の奥さんをじっと見つめていた。
 その後野次馬は散り、交通は復活した。
 にごった目の市民はそれでもまだ長いこと石台から落ちるのをやめなかったが、ついには彼もそんな動きを停止した。
 この時、たった今買ったばかりのような椅子を運んでいたどこかの誰かが、全身の力を振り絞って、路面電車の下に飛び込んだ。
 ふたたび巡査がやってきて、ふたたび野次馬が集まりだし、交通はストップし、にごった目の市民はふたたび石台からころげ落ちはじめた。
その後ふたたびすべてがおさまり、イヴァン・イヴァーヌイチ・カルポフさえもが台所へ戻ってきた。

 

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